みかげ塗りとは
揉み和紙の強弱ある陰影を生かしつつ、金糸や金粉などを使って仕上げられる特殊な装飾技法で、御影石のような表情が現れることからこう呼ばれます。和紙を何枚も貼り重ねたり、塗りと研磨を何度も繰り返したりと、高度な技術に加えて非常に手間と時間が必要な技法です。その制作工程を順にご紹介しましょう。
1. 和紙の乾燥・揉み染め
みかげ塗りに用いられる和紙は、特別に漉いてもらった2700mm×1100mmという特注品。これを3年~5年かけて自然乾燥してから使用します。乾燥が終わった和紙は、水に浸けて手で揉み込みながら着色。この工程で和紙に皺と風合いが生まれ、味わい深い陰影が現れます。揉み方一つで色合いや柄が変わるため、同じものは二つとありません。
2. 木地への貼りつけ
出来上がった和紙をデザインに沿って切り、木地(加工された木材)に貼りつけます。デザインによっては二重・三重に貼りつけるため、貼っては乾燥させ、紙やすりをかけてもう一度和紙を貼って乾燥…という作業を繰り返します。
3. 塗り・磨き
表面を守り、光沢を出すために塗装を行います。これも塗っては磨きを何度か繰り返し、曲面を含めてすべてが2~3ミリの均一な厚さになるよう、熟練の職人が仕上げていきます。磨きの工程は、熱が発生して塗装が溶けたり変色したりするため、非常に難しい作業で、熟練工でも1枚仕上げるのに2時間を要するほどです。
4. 蒔絵
鏡のように仕上がった表面に金糸や金粉を使って蒔絵を施します。季節によって湿気が変化するため、金糸や金粉の流れは季節ごとに微妙に表情を変えます。こちらも非常に繊細な作業のため、戸板にして1日3本分が限度と言われています。
5. 組立
みかげ塗りはすべて手作業で行われ、2つとして同じ模様はありません。このため、組み立てた時に1つの模様のつながりが浮かびあがるよう、部材に番号をふり、正確に組み立てられていきます。また、みかげ塗りは手作業が多いため、組み立ての際には繊細な微調整が必要です。このため、熟練工でなければ組み立ては困難で、1本組み立てるのにも一般の仏壇以上に多くの時間が必要になります。