良いお仏壇とは「ご家族を幸せな気持ちにできるお仏壇」。

東條:お仏壇は、車や家電品のような機能を売る商品とは違って、ご家族の心が籠る、あるいは込めるものですよね。つまり、私たちが扱っているのはお客様の「心」なのです。それだけにお仏壇をご提案するのは難しいと感じませんか?

鉾建:確かにそうですね。車や家電品なら、お客様はこんな機能が欲しい、こんなデザインが好きという意思をはっきり持っておられます。しかし、一般の方がお仏壇を前にすると、何を選んでいいのかわからなくなってしまう。これは、ひとつにはお仏壇に対する知識や情報を充分お持ちでないためであり、核家族化が進んだ現代社会では無理のない事です。さらに、お仏壇は故人やご先祖様のものであり、また子や孫のものでもあるため、自分の価値観だけで決めてしまっていいのか悩んでしまうという側面もあるんじゃないでしょうか。

東條:同感ですね。だからこそ、お仏壇の専門知識と地域の伝統や風習を熟知した我々のようなお仏壇の専門家の役割は大きいのですよね。

鉾建:私は、良いお仏壇とは「ご家族を幸せな気持ちにできるお仏壇」だと思っているんです。お仏壇を前にした時、故人の人となりを思い出したり、ご家族の故人への想いが感じられたりすることで、人はお仏壇を通じて幸せを共有できると思うんです。東日本大震災でたくさんのご遺族のお話をお聞きし、たくさんの想いに寄り添った事で、お仏壇にはご家族の心を癒し、幸せにする力が確かにある事を確信したんです。

東條:なるほど、ご家族を幸せにするのが良い仏壇ですか…。言い得ていますね。でも、一口にお客様の想いに寄り添うと言っても、決して簡単な事ではありませんよね?多くの場合、本当の想いは心のずっと奥底に封印されているというか…

鉾建:そうなんです。はじめは故人への悪口ばかり言っていた方が、よくよく話を聞いていくと、故人への深い愛情を話し始めるということは本当に多いですよね。だからこそ、私たちはじっくり時間を掛けてお客様とお話ししなければなりません。心の奥底の本当の想いに耳を傾け、それを仏壇という「形」に反映するのが、私たちの使命なのです。

東條:本当にそうですね。適当にお話を聞いていただけではありきたりのお仏壇しかご提案できない。ありきたりのお仏壇では、手を合わせても幸せな気持ちには決してなれないでしょうからね。

鉾建:良いお仏壇は、お客様を心の“奥底”から幸せにできるんです。これは車や家電品では到底できない事ですよね。ここまで深いご満足をお届けで来る仕事が他にあるでしょうか?私はお仏壇に関われている事を本当に幸せだと感じているんです。スタッフたちにも、仏壇の良し悪しはお客様の想いにどれだけ寄り添えたかで決まると言っているんです。専門知識はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは接客の量と質だと思うんですね。

 

社員教育は、白檀の成長のように毎年少しずつでも積み重ね、続ける事。

東條:なるほど、仏壇販売店で最も大切なのは接客の量と質ですか。同感ですね。ところで接客と言えば、ほこだてさんでは、マナー講習を積極的に行われているんですよね?

鉾建:はい。外部の講師を招き勉強会を続けています。

東條:日本人の接客マナーは海外の人たちから高く評価されていますよね。特にホテルや旅館のきめ細かな気配りは、もはや世界一とも言われるほど。ほこだてさんでさえもまだ学ぶことはあるんですか?

鉾建:マナー研修を受けてみて感じるのは、マナーや気配りにこれでいいというゴールはないという事ですね。「なるほど、そう対応した方がもっといいぞ」そう気づかされる事ばかりです。白檀は年に1mmしか成長しないけど、その分丈夫で美しい木材になるのと同じで、人の教育も毎年1つずつでもいいから着実に前進していく事が大切なんです。成長を止めたらおしまい。永遠に続けていくしかないものと私は考えています。

東條:そうですね。そうやって努力することに躊躇のない人、やる気のある人は、年齢性別に関係なく、ぐんぐん成長していきますよね。

 

年齢性別よりも、大切なのは純粋にお客様の想いに寄り添い、親身になって考える事。

鉾建:同感です。ところで年齢性別に関係ないといえば、森正さんはかつてにくらべて、女性や若い社員さんの人数が増えましたよね?

東條:はい。工場の方ですけどね。99名中、30名が20代や女性社員で構成されています。

鉾建:すごい若さですね。モノづくりの現場に若い人や女性がきちんと入社されるっていうことが素晴らしいと思います。

東條:みんなまじめで根性もあって頼もしいですよ。今の若者をとやかく言う人もいますが、うちには欠かせない「人財」になっていますよ。年齢よりも大切なのは、一生懸命にお客様の気持ち・想いに寄り添い、親身になって考えることだと思うんです。とかく慣れてくると、お客様を経験則にあてはめ、お客様が安いお仏壇を希望されているなら安いお仏壇しか提案しなくなるんです。
それでお仏壇の専門家と言えるのだろうか?と私は思うんです。専門家なら、お客様の心の奥にある声なき声に耳を傾け、ご予算内でより良いお仏壇をご提案するのが使命だろうと。

鉾建:確かに、むしろ新人スタッフの方がそういった経験則がない分、一生懸命に良いお仏壇をご紹介しようとしますね。値段の高い安いは気にしていないので「このお店の中で、このお仏壇がお客様にとって一番良いお仏壇ではないでしょうか?」という純粋なご紹介の仕方です。

 

毎日手を合わせたくなるような、「愛着」に応えられる仏壇をお奨めすることも大切な使命。

東條:当社でも、入社2~3年目のスタッフが、国宝シリーズという高級仏壇を売った事例があります。これは、新人が高いお仏壇を売ったから凄いという話しでは決してありませんよ。一切の先入観や打算を持つことなく、ご来店いただいたお客様にとって最良のお仏壇をご紹介する意思・姿勢ことが大事であるということです。

鉾建:お客様が「安い仏壇でいい」というのは「仏壇はよくわからないから、まぁ安いのでいいや」という方が殆どなんです。でも、きちんとお話を聞いていくと、実は故人への想いや強いこだわりを持っている方はとても多く、それを反映したお仏壇をご提案したら、心から喜んでもらったという経験は、数えきれませんよ。

東條: お仏壇というのは、大切な故人様のお家のような空間です。その方が住まわれる場所を、高いとか安いとかいう基準だけで判断してほしくないですよね。
それに、多くの場合、良いお仏壇をお買い求めになった方の方が、そのお仏壇を大切にしますね。お仏壇は買って終わりではなく、毎日心を込めて手を合わせることが大切なんです。毎日心を込めて手を合わせることが大切なんです。毎日向き合えるような「愛着」を持てるお仏壇かどうかも大切な要素ですよね。

鉾建:たしかにそうですね。良いお仏壇をお買い求めになられた方の方が、そのお仏壇を大切にされる傾向は確かにありますね。そうしたお客様は、お仏壇を丁寧にお掃除していますし、お掃除の仕方などについて、お問い合わせも頻繁にいただきます。それだけ愛着を持たれているという事でしょうね。

 

一般の方が、お仏壇を買われる上で、大事なこととは何でしょうか?注意するべき点などあれば、教えてください。

何世代にもわたって受け継ぐものだから、修理できる体制を確保しておくことも我々の大切な使命。

鉾建:お仏壇とは、何世代にもわたって長く使われるものですよね。これは使い捨てを前提とした現代の家具や家電品とは根本的に違います。
しかも、お仏壇は木製品なので、長く使うほどに狂いもでてきます。扉の締まりが悪くなってきたり、傷や汚れが目立つようになったり。でも、これを大切に修理し、手入れながら使い続けるからこそ家族の愛着も一層深まるのです。

お仏壇とは元々そうして受け継がれてきたものなのです。だとすると、大事にしているお客様なら、何十年後でもお仏壇を買ったお店にお手入れや修理の問い合わせをしてくるはずです。そのお問い合わせに確実に応えることができることが、我々お仏壇販売店の使命だと思っています。

東條:確かに。問い合わせをしたら、お店がなくなっていたのではその方は頼るところがなくなってしまいますからね…。これは、仏壇のお店は倒産など決して許されないという事ですね?(笑)

鉾建:一方、当社では「購入した仏壇屋さんがなくなったので相談してもいいかしら?」「よその仏壇屋さんで買ったんだけど…」といった相談も何度もおうかがいしています。もちろん、どこでお買い求めになったお仏壇でも、心を込めて対応させていただいています。これは、仏壇を扱わせていただいている者としての社会的使命だと思うからです。 お仏壇を買われる際には、そうした使命感をきちんともったお店からお買い求めいただくことが重要ではないでしょうか?

 

修理に対応できない会社は、仏壇メーカーに位置付けてはいけない。

東條:当社は販売店もありますが、そもそもはメーカーです。メーカーにとって最も大事なことは、「品質管理」。先ほどもありましたが、仏壇は木製品なので、長く使えば湿気などによって必ず何らかの不具合がでてきます。鉄製品とは異なり、とてもデリケートなんですね。
時にそれはクレームにもなるのですが、そうしたクレームにこそきちんと対応することが木製品を扱うメーカーの責務なんです。それができないならば、そうした会社をメーカーと位置づけてはいけないとすら、私は考えています。

鉾建:つまり、作りっぱなし、売りっぱなしは、メーカーとしての責任を果たしていないぞと。具体的にはどんな事に取り組んでいるのですか?

東條:何といっても、修理です。お仏壇は木製品なので、ちゃんと作っている限り修理ができないということはないのです。当社からすれば、修理ができない仏壇は、仏壇ではないと考えています。
最近はすごく安いお仏壇も出回っているようですが、そういったお仏壇は作りっぱなしのお仏壇で、修理は難しいんです。仮に修理できたとしても、元値以上の修理費がかかってしまう…。そういう修理がきかない使い捨て感覚のお仏壇を、故人様の住まわれる空間として選択してしまうのは、どうしても違和感がありますね。

 

仏事や供養の経験のない方が何でも相談できる頼れる専門家であることが仏壇販売店の役割。

鉾建:鉾建 同感ですね。仏壇販売店の役割というのは、そういう先々の修理のことも含めて、お客様のご相談先になれるということですよね。
現代では、仏事や供養についての知識も経験もないという方が殆どです。初めてのことにどうしていいかわからない、途方に暮れてしまうという方はとても多いのです。そのときに、専門家として何でもご相談いただける相手になれることが、仏壇店として最も大切なことだと私は考えているのです。

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